眼精疲労

眼精疲労の機序


眼精疲労の原因は眼の中のピント調節を司る毛様体筋と眼の向きを変える外眼筋の疲労によって生じます。

人は調節安静位より近くを見るときは正の調節と言われ、

副交感神経の働きにより、毛様筋輪状部収縮、求心性に毛様体輪を縮小し水晶体を厚くしピントを合わせます。

逆に遠くを見るときは負の調節と言われ、

交感神経の働きにより、毛様筋縦走部収縮、遠心性に毛様体輪を拡大し水晶体を薄くしピントを合わせます。

いずれも自律神経支配のため、自分の意志では制御できません。

院長写真

近視過矯正の方や遠視の方は、常に正の調節が働いている状態となり、毛様筋輪状部収縮が持続し、疲労を生じます。(一日中、膝を曲げて正座しているような状態です。)

自律神経支配であるため、通常日中は全身的には交感神経優位で、就寝時は副交感神経優位となりますが、上記の状態では眼は一日中、副交感神経が優位な状況となり疲労を生じます。寝ても眼精疲労が改善しないのはこのためです。

遠視や近視過矯正、老眼により近くがよく見えない状態だと近方視時の眼位が安定せず眼精疲労を生じます。しかし、過矯正が良くないからと低矯正にすると、遠くが見えないため遠方視時の眼位が安定せず、これも眼精疲労を生じる原因となります。これらの症状を改善するためには遠近両用眼鏡の装用が有効なときがあります。

院長写真

 

外眼筋の疲労は、斜位によって生じることがあります。具体的には内斜位・外斜位・上下斜位により、両眼でみるために常に外眼筋に力を入れている場合に生じます。明らかな斜視ではこのような疲労は生じませんが、見た目は一見正常にみえてしまう斜位は眼精疲労を生じます。下記は外斜位の場合です。外斜位があると眼を開けている限りは遠くを見ていても眼を内寄せしないといけないため疲労を生じます。

院長写真

 

片眼で見ていると楽なのに両眼で見ていると辛い状態となります。また、ひどいときは両眼で見ると物がダブって見えます。このようなときに片眼を閉じると閉じた側にあった像が消えるのか、あるいは反対側の像が消えるのかによって内斜位なのか外斜位なのかが分かります。

このようなケースではプリズム入りの累進屈折力眼鏡の装用が有効なときがあります。